山陽新聞プレミアム倶楽部 2023年4月1日

山陽新聞プレミアム倶楽部 2023年4月1日

救急から在宅までを基本理念に

社会医療法人 全仁会 理事長 高尾 聡一郎氏

新救急棟が稼働して2年ですね。

30周年記念事業として救急・外来・手術機能の強化のための「新救急棟」を増築いたしました。工事期間中にコロナ禍となり、ゾーニングや救急受け入れ、手術室の稼働制限といった悩ましい時期もありました。またどの医療機関もですが、コロナ感染症への対応に苦慮し3年でありました。新年度、基本的な感染対策は引き続き実施してまいりますが、制限されていた機能を余すところなく発揮し、地域医療に一層貢献していけるものと考えています。また、最近は活動制限の緩和もあり、特に若い方を中心に「スポーツ外来」の患者数はコロナ前と同様まで戻りつつあります。また、スポーツ専門医を含む専門医4名が常勤する整形外科では、老若男女を問わず手術やリハビリへの需要の高まりを強く感じています。5類移行後も感染対策に引き続き注力しながら、地域の支えとなれる体制を目指します。

専門外来の他にも特徴的なセンターがありますね。

 ニューロモデュレーションセンターは脳・脊髄・末梢神経の幅広い疾患に対応しています。パーキンソン病の脳深部刺激療法や慢性疼痛に対する脊髄刺激療法、脳卒中後や神経障害としての痙縮に対するバクロフェン髄注療法等に加え、昨年は「歩行障害外来」を開設。特発性正常圧水頭症の治療にもあたっています。勉強会やホームページ等で広く周知していきたいと思っています。  認知症疾患医療センターでは、認定から10年を超えた今も、相談件数・初診患者数が増え続けています。かかりつけ医や介護・医療現場の連携を深め、認知症の的確な診断と治療に繋げることを目的に、支援を必要とする患者とその家族が住み慣れた地域で安心して生活できるよう、地域包括ケアシステムの中核を担うものとして責務を果たします。

今後の展望は。

おかげをもちまして全仁会は今年で創立35周年を迎え、私自身も理事長に就任して10年がたちました。その間の医療・介護の変遷はご承知の通りであり、今後も益々変化を続けるでしょう。今年のスローガンは「原点回帰―元気出して行こう―」としました。われわれの原点とは、「救急から在宅まで何時いかなる時でも対応します」という創立時の理念です。職員一人一人がその理念を胸に「患者さん本位の医療」を実践しています。どのような変化の中にあっても、地域医療への思いに立ち返り、心の通った地域医療・福祉の実践に努めてまいります。

山陽新聞 2023年4月1日 掲載