“ふるえ”の最新治療

身体の一部が規則的に一定方向にふるえる状態を振戦(しんせん)と呼びます。
 振戦の原因として最も多いものが本態性振戦で40 歳以上の20人に1人、また 65 歳以上の5人に1人が本態性振戦にかかっており稀な病気ではありません。本態性振戦にかかると字を書く時やお箸を使う時、コップで水を飲もうとする時などに手が大きく震えるなど動作時振戦と呼ばれる症状が出現し日常生活に大きな支障が出ます。
 パーキンソン病もふるえの原因となりますが、パーキンソン病患者様の場合は安静にしているときにふるえが出現し動作を行うとふるえが止まりますので本態性振戦と症状が異なります。本態性振戦やパーキンソン病でなぜ振戦が生じるのかという明確な原因はわかっていませんが、小脳と視床という脳の一部を結ぶ神経の伝達異常に関連があることはわかっており、お薬で十分な効果がない場合、視床に対する外科的治療が60年以上前から行われてきました。

 外科治療には、視床の一部を凝固(破壊)して異常な神経伝達を断ち切る凝固術と、視床に電極を留置して異常な神経伝達を遮断する脳深部刺激療法(DBS)があります。どちらの手術も同等の効果が得られますがそれぞれ利点と欠点がありますので詳細についてはこちらをご参照いただけますと幸いです。以前から凝固術は定位的脳手術装置という非常に正確な手術装置を用いて視床に直径1mmの細い針を刺入して小さな凝固を行う手術(高周波凝固手術)が行われてきました(当院でも行っています)が、近年「経頭蓋集束超音波照射治療(FUS)」という新しい凝固手術が登場しました。FUSは皮膚を切らずに体外から超音波を当てて脳の一部を凝固する“メスを使わない手術”です。
 先日、FUS治療を数多く行っておられる国立病院機構宮城病院様にFUS治療の見学に伺わせていただきました。手術中に脳MRIを撮影して凝固位置を確認するためとても精度が高いことを実感しました。また、切らない治療であるため術後の患者様の負担が少なそうであることも印象的でした。
現在FUSは本態性振戦とパーキンソン病に対して保険適応となっております。この4月より岡山旭東病院(岡山市)でFUS治療が開始されることもなり当院も連携施設として私が治療に参加することとなりましたので、FUS御希望の患者様は当院にご相談頂いても治療を受けることが可能となります。ふるえでお困りの方はご相談ください。

倉敷ニューロモデュレーションセンター長
牟礼英生(むれひでお)
平成11年 徳島大学医学部卒業
専門分野 / 脳神経外科
学会・資格等
・医学博士
・日本脳神経外科学会専門医
・日本定位・機能神経外科学会技術認定医
・日本脊髄外科学会認定医
・日本脳卒中学会専門医
医師紹介



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