鬼手回春(きしゅかいしゅん)

第181号 平成19年8月15日発行

         
  Drの目  

「麻酔科医って」
麻酔科部長 和田聡

 みなさん、こんにちは。7月より当院麻酔科常勤となりました和田です。これまで常勤医はおらず手探りの状態の中で1ヶ月が経ちました。8月からは当直も入りますのでよろしくお願いします。

 ところで麻酔って御存知ですか? 麻酔とは人間の身体を手術が可能な状態におくことです。手術は生体に及ぶ人為的な侵襲の中では最大のものです。生体側の様々な条件や手術の種類によって麻酔の方法が異なります。

 麻酔には、大きく分けると全身麻酔と広義の局所麻酔があり、後者は、さらにその方法によって、脊椎麻酔、硬膜外麻酔、狭義の局所麻酔に分かれます。手術室で行なう大きな手術の大部分は全身麻酔、もしくは全身麻酔と局所麻酔を組み合わせたもので行ないます。

 麻酔は、一般に無意識・無痛、手術の妨げとなる生体反応の除去の3つを達成することと言われていますが、必ずしもこの三者が同時に得られる訳ではなく、例えば局所麻酔は無意識の達成を企図してはいけません。

 全身麻酔に用いる麻酔薬には、呼吸を抑制する作用を有するものがあり、そのため、これらの薬剤を用いる全身麻酔中には十分な呼吸ができなくなります。さらに、手術の円滑化?麻酔医の安心?を得るために筋弛緩薬を用いるので、全身麻酔の受ける患者はほぼすべてに気管に専用の管を入れ肺に酸素や麻酔薬を送り込む方法が用いられます。しかし、一方では筋弛緩薬の使用によって傍目には、意識の有無の判断が難しくなり、又、無意識を得るために行なう全身麻酔でも選択する薬剤の種類や投与量によっては、無意識が得られず手術中に意識があることがあります。例え意識があっても筋弛緩薬が投与されていれば身体の一切の部分を動かすことができず、患者さんは自分で何も訴えることができないのです。あってはならない事ですが術中どうしてもそうせざる得ない状況が生まれる事もあります。麻酔科以外に医師の中には「麻酔科医は静注で麻酔を導入して、挿管が済んでしまえば後は楽なもんだ」と思っていらっしゃる方も少なくないかもしれませんが、日々麻酔に従事して豊富な経験を積んだ麻酔科医でも、けっこうストレスを感じながら麻酔をかけています。色々書きましたが、最後に私の目標とする麻酔科像は「外科医に麻酔をかけているのを悟られない事」です。これは恩師の一人に言われた言葉ですがこの言葉の意味が分かるにはまだまだ時間がかかりそうです。