昆布の摂り過ぎによる甲状腺機能低下

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90歳代の女性の方で、疲れやすい・元気が出ないと訴えて来られた方がありました。疲れやすい原因は多20151020岐にわたりますが、一般検査では特に変化のない方でしたので、甲状腺機能低下や副腎皮質ホルモン低下を疑いました。甲状腺刺激ホルモン(TSH。脳下垂体から分泌されて甲状腺ホルモン分泌を刺激するホルモン) がかなり上昇していたにもかかわらず甲状腺ホルモン F-T4 は基準値未満で、明らかな甲状腺機能低下でした。副腎皮質ホルモンの低下はありませんでした。
女性の甲状腺機能低下は橋本病(自己免疫疾患のひとつ。日本の全女性の8人に1人18%と多く、潜在性を含めると甲状腺機能低下はそのうち10人に1人で、全女性の80人に1人が甲状腺機能低下。)が原因の事が多いのですが、この方は、橋本病を疑う自己免疫異常ありませんでした。診察では、甲状腺腫大や圧痛なく、亜急性甲状腺炎の経過もみられませんでした。
ヨード(ヨウ素)過剰摂取で甲状腺機能低下がありうる(ウォルフ-チャイコフ効果と言います)ので、食生活を尋ねたところ、かなり以前から、健康のためを考えて毎日、昆布小片1枚を一晩コップ1杯の水に漬けておいて翌朝に飲んでいたとのことでした。
昆布の小片は1枚4g~5gですので、全部溶出すればヨウ素6mgになります。ヨウ素の1日摂取推奨量は0.13mgで、上限は3mgとされています。日本人の平均摂取量は1日0.5mg~3mgで、必要以上または上限近く摂っていることになります。この女性は、上限量の約2倍を上乗せして毎日摂取されていたことになります。また慢性的な腎機能低下がありましたので、ヨウ素の尿中排泄が減少していると考えられ、実際にはヨウ素過剰がより強かったと思われます。
通常は、甲状腺になんらかの異常がある時に過剰なヨウ素摂取で甲状腺機能が低下するとされていますが、もともとの異常が無くてもヨウ素過剰摂取で甲状腺機能低下をきたしたとする報告があります。(2008年報告 昆布15g=ヨウ素35mgの連続55~87日摂取で明らかな甲状腺機能低下 )
原発事故などで放射性ヨウ素に被爆してしまった時に、甲状腺への被爆を減らす為に非放射性のヨウ素製剤を服用する予防法がありますが、普段からヨウ素を摂り過ぎているとヨウ素製剤を服用しても効果が出ないであろう事も報告されています。
食品1食中のヨウ素量(H19年度指定課題研究報告)の概略は、こんぶ茶0.3mg前後、即席みそ汁0.01mg~0.3mg、吸い物0.003mg~0.6mg、即席カップ麺0.05mg~4.4mg、鍋のつゆ0.01mg~3.8mg などです。
1日推奨摂取量0.13mg・上限3mgと比べて、かなり含有量の多い食品があります。
私たちは通常の食生活でヨウ素を既にやや必要以上に摂っていますので、それ以上の摂り過ぎには注意が必要です。

平成南町クリニック 医師  玉田