赤身の肉のカルニチンは元気の素

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本年9月3日に倉敷中央病院脳神経内科部長 森 仁先生の「てんかんとその合併症~カルニチン欠乏症の診断・治療指針2018を踏まえて」の講演会がありました。
抗てんかん薬であるバルプロ酸の添付文書によれば0.1~5%未満で高アンモニアが生じるとなっています。
ある程度の高アンモニア血症は発症しても仕方がないとされているようですが、講演ではバルプロ酸代謝に伴うカルニチン欠乏が原因であることが多いので、バルプロ酸投与を中止できないときは、血中カルニチン濃度(2018年2月から保険適応)を測定し、濃度と症状に応じてカルニチン投与の治療が推奨されるとのことでした。(バルプロ酸は遊離カルニチンと結合して尿中に排泄されますが、その結果としてカルニチンが欠乏して行き、尿素サイクルが停滞してアンモニアが増えるのです。)
カルニチンはビタミンには分類されませんが「条件的必須栄養」とされています。体内のカルニチンの75%が食べ物からで、25%を主に肝臓や腎臓でアミノ酸を材料として作っています。99.4%が骨格筋に存在し血液中にあるのは0.6%とのことです。
脂肪酸がエネルギー源として利用されるには細胞質にあるミトコンドリアの中に脂肪酸が入らなければなりません。中鎖脂肪酸は直接入っていきますが、大部分の脂質である長鎖脂肪酸はアシルCoAに変化してから活性のあるL-体 カルニチンと結合してアシルカルニチンとなるとミトコンドリア内膜を通過できるようになります。
ブドウ糖が少ない時間帯において、カルニチンが不足していると長鎖脂肪酸が燃焼できずエネルギー不足になります。また脂肪酸β酸化ができないのでブドウ糖新生ができずに低血糖が是正できなくなります。その他にも、細胞内の悪性脂肪(中間代謝物として蓄積した脂肪)を細胞外に排出する機能が低下し、インスリン抵抗性が高まることもあります。
カルニチン欠乏の症状は多彩です。強い倦怠感・筋緊張低下・筋力低下・こむら返り・横紋筋融解や空腹感・頻回嘔吐・体重増加不良・呼吸異常・心機能低下、あるいはけいれん・意識障害・脳症などがみられます。検査値異常としては、低ケトン性低血糖・代謝性アシドーシス・高アンモニア血症・電解質異常・肝機能障害・脂肪肝・治療抵抗性貧血などがあります。
生まれつき欠乏することもありますが多くは後天的原因でカルニチン欠乏が生じます。①貯蔵減少/必要増加:妊娠授乳・敗血症・AIDS ②生合成の減少:肝硬変・慢性腎疾患 ③摂取量低下:肉類や乳製品を摂らない・菜食主義・経管栄養・牛乳アレルゲン除去調整粉乳栄養など ④吸収低下:腸管が少ない(短腸 腸切除 炎症性腸疾患 嚢胞性線維症 ⑤尿細管再吸収減少:腎不全・Fanconi症候群・腎透析・連続腎代替療法 ⑥排泄増加:薬剤(バルプロ酸 フェノバルビタール フェニトイン カルバマゼピン ピボキシル基を持つβラクタム経口抗菌薬 抗癌剤など)に伴う排泄。これらの中で注意すべきはよく使用されるピボキシル基を持つ経口抗生物質(セフカペンピボキシル、セフジトレンピボキシルなど 当院では殆ど処方しません。)です。痩せて筋肉が少なくカルニチン含有食材摂取量の少ない高齢者の方や幼小児の人は、薬剤服用でカルニチン欠乏になっているかもしれません。
カルニチンが多く含まれる食品はマトン、ラム、牛肉の赤身、豚ロースなどです。普段からこれらの食品を充分摂って元気に暮らしましょう。
※カルニチン欠乏症の診断・治療指針 2018 を参考にしました。

平成南町クリニック  玉田