日別アーカイブ: 2022年1月20日(木曜日)

藻塩・・・来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ 藤原定家

カテゴリー: 平成南町クリニック | 投稿日: | 投稿者:

 寒い時期になると普段よりも血圧が上昇する患者さんが増えて来ます。自治医科大学の苅尾教授は、10℃の気温変化で血圧が10mmHg以上変動する病態を「気温感受性高血圧」と名付けています。足元の気温低下がより強く影響し、血圧上昇に伴って心血管イベントが発症しやすくなります。早朝の足元の冷えには特に注意しましょう。

西伊豆健育会病院の早朝カンファ 2021年12月(仲田和正医師)で、ニューイングランド ジャーナル オブ メディスン 2021年11月号の総説「塩と血圧」についてのまとめが紹介してあります。

10項目の重要な要点を挙げてありますが、その中の3項目をとり上げてみます。

①「食塩の1/4を塩化カリウム」で脳卒中14%、心血管疾患13%、死亡率12%減少し、高カリウムなし

⑦ポタシウム(=カリウム)スイッチでナトリウムとカリウム保持。食餌のカリウム増やすとスイッチがオフになりNa減少し血圧が低下する

⑨血圧低下に(食物)線維重要:大腸バクテリアが線維発酵しGタンパク質共役型受容体を活性化して高血圧を防ぐ

①:北京大学の医師達の研究結果です。代替食塩(塩化ナトリウム75%、塩化カリウム25%)と塩化ナトリウム100%(普通の食塩)での食生活を平均4.74年追跡して得られた結果です。

⑦:以前からカリウム摂取を増やすと血圧が下がり塩感受性(塩摂取で血圧が上昇すること)も著明に低下することが知られていました。最近、ポタシウム スイッチという概念が提唱されています。腎臓の遠位尿細管細胞にNCC(ナトリウムークロライド共輸送体)と呼ばれる共輸送体タンパク質がありWNKキナーゼによって調節されています。 食塩(塩化ナトリウム)の摂取が多くても血液中のカリウムが低ければNCCでこのポタシウムスイッチが作動してカリウムを再吸収しますが、同時にナトリウムも再吸収してしまいナトリウムが体内に貯留し高血圧が起こります。逆に食事中のカリウムが多いとこのスイッチは働かず、塩化ナトリウムの再吸収が抑制され塩過敏性が緩和されて血圧が下がるのです。代替塩で血圧が下がる理由はこれにあります。

⑨:大腸のバクテリアは食物線維を発酵させて短鎖脂肪酸を作りますが、この短鎖脂肪酸が腎臓で Gタンパク質共役型受容体を活性化させて、抗高血圧反応を起こすのです。塩分が多い食事で短鎖脂肪酸を作る腸内細菌が減少するそうです。(以上 西伊豆健育会病院 早朝カンファ からの抜粋引用)

高血圧患者さんは1日の食塩6g以下の減塩食が勧められていますが、低カリウムにならないような注意も必要です。最近、低カリウム血症と共に全身の浮腫が生じた患者さんがおられました。⑦のポタシウムスイッチが入ったのではないかと推測しました。低カリウムを生じる原因は無くなっているので少量のカリウム製剤で経過をみています。

日本で発売されている代替塩(減塩しお)はどの商品も塩化カリウムほぼ50%なので、1日10g摂るとアスパラカリウム錠15錠分のカリウム摂取となります。アスパラカリウム錠は、1日通常3~9錠処方となっており、症状により1日30錠まで増量可能の薬です。重篤な腎機能障害・副腎機能障害、高カリウム血症などでは禁忌(処方してはいけない)事になっていますので、代替塩(減塩しお)はよほど注意して使用する必要があります。「減塩しお」ではなく「藻塩」だと16gでアスパラカリウム錠の1錠と同じカリウム量ですので、通常の藻塩使用量ではカリウム過剰の注意はまず不要です。

先の北京大学の研究では代替塩摂取グループでの高カリウム血症は生じなかったようですが、腎機能障害やもともと高カリウム血症のないグループだったのでしょうか。

平成南町クリニック 玉田