日別アーカイブ: 2021年9月21日(火曜日)

ケトン体の効能

カテゴリー: 平成南町クリニック | 投稿日: | 投稿者:

光文社新書 脳の寿命を延ばす「脳エネルギー」革命 佐藤拓己(東京工大応用生物学部教授)著 を読みました。内容をまとめると、脳の寿命を延ばす鍵は「ケトン体」であり、その効能は以下になります。

1) 細胞のエネルギー源になる
2) 記憶保持効果・抗炎症作用(細胞膜にあるHCAR2と言う受容体を活性化して作用する)
3) 脂肪燃焼させる(細胞膜にあるGPR43という受容体と結合して脂肪燃焼酵素群が活性化される)
4) 神経細胞(ニューロン)死を防ぐ(核内にあるHDAC受容体を抑制して抗酸化酵素の抑制を解除する)
5) 前頭葉に多いセロトニン受容体を持つ神経細胞の機能を高めセロトニン機能を高める(心のバランスがとれ幸せを感じる)
6) 脳血流量を増やす
など


ケトン体は、網膜や赤血球以外の細胞のエネルギー源になるのですが、脳細胞のエネルギー源にもなり、ブドウ糖よりも効率が良いのです。血糖値が下がった時にはケトン体がないと神経細胞は活動低下し低血糖症状を起こし、昏睡状態になる事もあります。逆にケトン体が十分あると血糖値が35mg/dLのような「低血糖」でも低血糖症状は起きません。
脳のエネルギー源は血中のケトン体濃度によって変化するのです(同書 文献39)

通常の食事(糖質60%程度)では、ケトン体濃度0.1mM(1L中に0.1ミリモル)でブドウ糖100%、糖質制限時はケトン体濃度1.0mMでブドウ糖70%・ケトン体30%、数日間の絶食後にはケトン体2.5mMでブドウ糖50%・ケトン体50%、ケトン食ではケトン体濃度5mMでブドウ糖30%・ケトン体70%のエネンルギー源比率になる。

ケトン食は1日の糖質数g以下で脂質カロリー80%、蛋白質カロリー20%弱にする食事で、難治性てんかんや癌治療、精神疾患への効果が実証されています。

インスリンの基礎分泌(100pモル/分)があれば、糖質を最高に制限しても血中ケトン体濃度は10mM以上にはならず「生理的ケトーシス」になるのであって、インスリン分泌不足時の「ケトアシドーシス」とは異なります。

糖質過剰摂取時にはインスリン分泌スパイクが生じ、ケトン体産生に必要な酵素(HMGCS2)が強く抑制されてケトン体が産生されないのです。著者は、糖質過多にならないようにして(記載はありませんでしたが糖質40%程度と思われます)血中ケトン体濃度が0.2~0.5mMにしておくのが長生きする秘訣としています。ケトン体とは別に、インスリンやインスリン様成長因子1が老化の本体という「インスリン学説」が紹介されています。
血中ケトン体濃度を0.1mMから0.2~0.3mMに上げてアルツハイマー型認知症の症状が改善できた事例が紹介されています。(緩い糖質制限で到達可能です)
2)~6)の効果で、肥満を防ぎ認知機能を低下させずに楽しく長生きをしたいですね。
また、江部康二医師(ブログ ドクター江部の糖尿病徒然日記の言われるように、ケトン体を高値にして「免疫力向上」させ新型コロナウイルス感染症に対応したいですね。

 


平成南町クリニック 玉田