日別アーカイブ: 2021年7月20日(火曜日)

ケトン体を増やす食生活

カテゴリー: 平成南町クリニック | 投稿日: | 投稿者:

NHK BSプレミアム 「ヒューマニエンス」2021年7月8日 にて、大阪大学の萩原圭祐特任教授が行った「がんの食事療法」が紹介されていました。

進行癌(ステージ4)患者37人に抗癌剤投与とケトン食(1日の糖質10~30g)を行い5年間経過観察した結果、37人中10人で癌が消滅したとのことです。癌細胞がブドウ糖を利用できなくなり消滅したと考えられるのですが、この結果は信じられないほど良い結果です。(治験登録締切り後なので参加できなかった当院通院中の患者さんがおられました。) 通常は睡眠中に血中ブドウ糖濃度は低下しケトン体は上昇するが、年齢が高くなるとケトン体の上昇が少なくなるという観察事実の紹介もあり、年齢が上がるとケトン体が減少するので発癌しやすくなるのではないかという同教授の仮説も紹介されました。

大阪大学でのケトン食の映像をこの番組で始めて見ましたが、我が家の普段の休日と同じでした。即ち、米飯・パン・麺類・パスタなしの「おかずのみ」です。私は、出勤日は勤務先で昼食を摂り米飯や麺類を食べますので「3食ともケトン食」ではありません。また、時には自宅でも米飯を少し食べますし、間食でお菓子を食べる事もあるので緩い低糖質食といったところです。

番組では、ケトン食を継続するには余程の精神力のある人やストイックな人でないと続かず、その理由としては糖質への欲求がどうしてもあるからだとしていました。それを認めざるを得ませんが、私自身は、必要があればすぐにケトン食を実行できる気がします。

アセトン、アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸をケトン体といいます。3-ヒドロキシ酪酸はケトン基がありませんが「ケトン体」に含めて語られます。肝細胞、脳アストロサイト、腎臓、小腸粘膜上皮で脂肪酸から作成されます。

ケトン体と言うと糖尿病でのケトアシドーシスを思い浮かべる人が多いと思いますが、インスリン不足時のケトアシドーシスとケトン体が多いだけのケトーシスとは異なる状態で、ケトーシス自体は危険ではありません。

通常糖質量食事での血中総ケトン体基準値は、26~122μM/Lですが、胎盤組織液の-ヒドロキシ酪酸濃度は平均22350μM/L(胎児は殆ど「ケトン食」です。)、絶食中やスーパー糖質制限(ケトン食)時には、300~4000μM/Lになります。
ケトン体は脳細胞のエネルギー源になります。通常状態でエネルギーの20%がケトン体(ハーパー生化学) 長期飢餓時のエネンルギー源は、ケトン体70%、ブドウ糖20%、アミノ酸10%(リッピンコット生化学)と記載。
がん治療よりも以前から、難治性てんかん治療として脂質エネルギー比率75~80%のケトン食が実行されており、3-ヒドロキシ酪酸4000μM/L以上でてんかん症状が減少するとのことです。また、アルツハイマー型認知症では脳内でのブドウ糖利用が低下しているのでケトン体が主なエネルギー源になっているそうです。順天堂大学 白沢卓二大学院教授によれば、ケトン体利用が増えると認知機能が上昇したとのことです。
さらに、3-ヒドロキシ酪酸は、炎症反応を誘導する蛋白質複合体であるインフラマソームの一部であるNLRP3を直接阻害しての炎症抑制作用もあります。
がんや認知症を予防し炎症の暴走を防ぐためには少しでもケトン体を増やす食生活を心掛けたいものです。

※診断基準を満たす膵炎、肝硬変、長鎖脂肪酸代謝異常、尿素サイクル異常症では糖質制限は不適切です。

【参考】組織のエネルギー源
エネルギー源としてどうしてもブドウ糖が必要な組織→赤血球(無核なのでミトコンドリアが無いため)。
常に主にブドウ糖を利用する組織→網膜。
ケトン体を利用しない組織→肝臓(脂肪酸は使用する)。
小腸のエネルギー源:グルタミン酸50~60%、ケトン体15~20%、ブドウ糖5~7%。大腸のエネルギー源は短鎖脂肪酸のみ(腸内細菌が食物繊維を分解して作る)。虚血心筋細胞はケトン体優位使用。カルニチンが不足すると、食品油脂に多い長鎖脂肪酸が核内のミトコンドリアに到達できない結果ケトン体産生が減少する。(カルニチン不足の原因は、赤味の肉などの摂取不足、代謝異常、肝硬変、下痢、利尿薬・ピボキシル基配合経口抗菌薬・抗てんかん薬などの薬剤、などです。)

平成南町クリニック 玉田