日別アーカイブ: 2019年4月20日(土曜日)

IGRAの「3つのワナ」

カテゴリー: 平成南町クリニック | 投稿日: | 投稿者:

蕾が何時しか満開となり今は葉桜の新緑が目に鮮やかな季節です。
蕾と言えば、梢の芽吹きの形(tree-in-bud appearance)と名付けられた胸部CT画像所見があります。結核症や非結核性抗酸菌症にほぼ特有の所見です。(Im JG らの提唱 1995年) 肺結核と言うと「空洞」のイメージを持たれている方が多いかもしれませんが、空洞陰影だけでは結核と診断するのは困難であり、気管支や細葉の小さな病変を表現するtree-in-bud appearanceがあると結核(あるいは非結核性抗酸菌症)の可能性が高いと言えます。確定診断は、結核菌ないし非結核性抗酸菌の証明です。結核患者さんと診断した医師は直ちに保健所に届け出なければなりません。

保健所は登録のあった結核患者さんが感染源になりうると判断した場合、その患者さんから感染を受けた人がいないかどうかを見つけ出すために「接触者健診」を行います。患者さんと接触した(そばに居た)人全員を対象にするのではなく、感染源の人の病状・接触の程度・接触した人の(感染を受けやすいかどうかの)状況を区分して対象の人が決まります。

接触者健診では結核に感染しているかどうかを「インターフェロンγ遊離試験(IGRA:アイグラと発音)で判定します。以前はツベルクリン反応を行っていましたが、現在は原則としてIGRAのみ行います。結核菌が持つESAT-6とCFP10という2種類の蛋白抗原に対して、その人の血液中のT-リンパ球がどの程度のインターフェロンγを作り出すかを測定して結核感染の免疫的な記憶があるかどうかを評価します。(「QuantiFERON TBゴールドプラス」と「T-SPOT」という2種類の検査法があります。)

陽性でも過去の感染か最近の感染かの区別はできない、結核感染既往のある人が全て陽性になる訳ではない(結核感染があっても陰性の場合がある)、また結核感染の無い人でも陽性になることがあるなどの制約があります。「その呼吸器診療、本当に必要ですか?あるのかないのかエビデンス(倉原 優 著)」の第14章によれば、
☑高齢者におけるIGRAの解釈には注意が必要である。アテにならない場合もある。
☑IGRAの「3つのワナ」を知っておく。と総括してあります。
3つのワナとは、高齢者・低栄養・免疫不全のワナ、陽性的中率のワナ、測定誤差のワナです。

陽性者に対しては結核の発病がないかどうかを検査(画像検査と喀痰検査)して、発病があれば活動性結核として治療を開始します。発病していなければ「潜在性結核感染症」としての治療(旧来の化学予防)を開始しますが、結核感染の機会の多い時代を過ごして来た高齢者の方では過去の感染との区別が困難ですので一律に治療対象にはなりません。また、陰性であっても全く放置してよい訳ではありません。状況に応じて経過観察が必要です。

当院は接触者健診の委託医療機関には指定されていませんが、「潜在性結核感染症」としての治療は行っています。

平成南町クリニック 玉田