日別アーカイブ: 2018年10月20日(土曜日)

「血液検査だけでは診断できない」不明熱  

カテゴリー: 平成南町クリニック | 投稿日: | 投稿者:

帝京大学ちば総合医療センター第三内科(血液・リウマチ)講師の萩野 昇先生の教育講演が10月3日にありました。演題名は「不明熱・不明炎症へのアプローチ~リウマチ科医の視点から~」です。

不明熱とは、大雑把に言うと原因がなかなか判らない発熱と言うことです(最終的には原因が明らかになる場合が殆どなのですが)。以下の内容が記憶に残りました。

「血液検査だけでは診断できない」不明熱には次のような疾患があるとのことです。
血管炎(結節性多発動脈炎、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎)、リウマチ性多発筋痛症、成人Still病、再発性多発軟骨炎、ベーチェット病、炎症性腸疾患、サルコイドーシス、周期性発熱症候群、IgG4関連疾患。

また発熱患者さんの炎症反応は陽性であることが多いのですが、「炎症反応陰性」の不明熱もあり、(先生の)個人的リストは以下のとおりです。
未確認の自己炎症症候群、ベーチェット病(の一部)、Q熱、ライム病、ある種の結合織病(エーレス-ダンロス症候群の一部)。

さらに不明熱の原因疾患に、リンパ腫と気付けないリンパ腫があることを知りました。
そのリンパ腫の特徴は、
・リンパ節腫脹がない
・リンパ節の検査をしても腫瘍細胞が認められない
・リンパ節腫脹が自然経過や治療修飾で退縮してしまう
であり、肝臓や脾臓の組織検査で初めて診断がつくそうです。

発熱患者さんの発熱の原因を毎回「正しく」診断できているかと言うと、自信がありません。症状の経過 身体所見 血液・尿検査 画像検査などで原因を絞り込んでいくのですが、上記のような疾患を想起できなければ真の原因を見逃す可能性があります。たとえ抗生物質を使って熱が下がったとしても、抗生物質が効果のある細菌性感染症だとは言い切れません。

講演会で挙げられた不明熱の原因疾患は経験することが稀な疾患が多いので、疾患の全体像を常に繰り返し学習しておく必要があります。

平成南町クリニック  玉田


一般外来で気付くためのヒント
(参考 萩野 昇著 ロジックで進めるリウマチ・膠原病診療、岩田健太郎編集 診断のゲシュタルトとデギュスタシオン1、2  など)
○結節性多発動脈炎=発熱+中型血管の虚血症状(四肢末端疼痛・睾丸痛・筋肉痛・間欠的で激しい腹痛)
○高安動脈炎=若い女性で持続する微熱・倦怠感+頚部・鎖骨下血管雑音、
○巨細胞性動脈炎=高齢者初発頭痛(頭皮痛・側頭動脈圧痛)+顎跛行・一過性黒内障
○リウマチ性多発筋痛症=60歳以降の急性~亜急性の全身の痛み(筋肉痛ではなく滑液包炎の痛み)
○成人Still病=若い女性でかなりの高熱でも割合元気 有熱時のサーモンピンクの痒くない皮疹
○再発多発軟骨炎=軟骨(鼻・耳介・喉頭・気管など)の変化に伴う所見や症状がある
○ベーチェット病=再発する口腔アフタ性潰瘍・外陰部潰瘍・膿胞性丘疹(針反応)・眼の症状
○炎症性腸疾患=クローン病:下痢・腹痛+肛門潰瘍・周囲膿瘍、潰瘍性大腸炎:下痢血便+アフタ性口内炎
○サルコイドーシス=眼のかすみ眩しさ・皮膚紅斑・不整脈・神経系異常など(診断きっかけは胸部写真異常)
○周期性発熱症候群=半日~数週間続く発熱が6~12ヶ月の間に3回以上繰り返し、無熱時に無症状
○IgG4関連疾患=唾液腺、肺、膵臓などに病変がある
○自己炎症症候群=周期的な発熱を繰り返す 他の疾患では説明できない症状・所見
○Q熱=1ヶ月以内に動物と接触歴のある人が肺炎・肝炎を発症
○ライム病=マダニに咬まれた、咬まれるような環境の人が全身の症状を来す
○ある種の結合織病(エーラス-ダンロス症候群の一部)=過伸展できる脆弱な皮膚で血腫生じ易い