日別アーカイブ: 2016年5月20日(金曜日)

湿潤療法による傷の治療

カテゴリー: 平成南町クリニック | 投稿日: | 投稿者:

指先をスライサーで切断してしまい皮膚欠損を生じた方が受診されました。他院で、縫合しなければならないと言われたたそうですが、縫合を拒否して当院の湿潤療法を希望して来られました。皆さんは傷にどのような処置をしていますか。楽にきれいに治したいものですね。当院では「湿潤療法」で治療しています。
私は、夏井 睦先生のブログ「新しい創傷治療 消毒とガーゼの撲滅を目指して」で湿潤療法を知りました。
皮膚の傷は、まず水道水で洗浄しますが細胞障害となる消毒はしません。異物を取り除くことは最重要です。縫合することが容易で無理がない場合は縫合しますが、縫合すると変形したり短縮してしまうと予測されるなら、無理に縫合はしないで創を開放したままで湿潤療法を行います。出血している傷には止血用のヘモスタパッドを当てて毎日交換し、止血すればプラスモイストやハイドロコロイド包帯に変更します。
指先の切断創では文頭の方もそうでしたが、数日で切断創が元の丸みを帯びてきます。まだ経験はありませんが、爪の基部が残っていると爪を含む指先の組織が再生することが確認されています。
ご高齢の方では打撲やずれによる表皮剥離を生じることが多いですが、縫合やテープ固定をしなくても湿潤療法で2~3週間で治癒します。
ガーゼやメッシュ状被覆材など創に固着してしまう被覆材を使用すると、処置の度に痛みが強く出血してしまい治癒までの期間が長くなり、傷跡が目立ちます。しかし固着しない被覆材を用いればそのような事がなく楽にきれいに治すことが出来ます。また、挫滅創を縫合したり遊離切断片を単純に縫合した場合も、湿潤療法を行うと壊死脱落が起こりにくく治癒までの期間が長引きません。
湿潤療法を行えば線維芽細胞増殖因子製剤のスプレーを使う必要はありません。また二次感染に適応となっているスルファジアジン銀クリームは、浅い傷を深い傷にしてしまうので絶対に使用しません。
「傷は消毒して乾かして治す」と思い込んでいる方は、ぜひ考えを新たにして下さい。

補足(1) 深い刺し傷や動物咬傷は傷口が塞がれると感染必発ですので、そうならないように太めのナイロン糸(縫合糸)をU字に曲げて差し込んでドレナージします。

補足(2) どのような皮膚の傷でも、もし感染を起こした場合はペニシリン剤か第一世代のセファロスポリン剤の抗生物質を内服します。猫や犬の咬傷の場合はβラクタマーゼ阻害剤配合薬やマクロライド系薬を選択します。緑膿菌感染を疑う場合にはニューキノロン薬を用いるなど傷や受傷状況に応じて抗菌薬を選択します。

平成南町クリニック 玉田